僕、登場人物がクズだらけで、その人達がエグい話を展開していく漫画や映画が大好きなんですよね。『闇金ウシジマくん』とか、『アウトレイジ』とか。お金のやり取りに焦点を置いた作品が好きなのもあるので、ウシジマくんはそれもあるんですけど。(同じ理由で『ナニワ金融道』も好き)
で、今マンガ図書館Zで『連ちゃんパパ』という漫画が読めるのでこれを是非オススメしたいです。今日読んだらめちゃくちゃ面白かったんで一気に最終話まで読みました。
ありま猛 『連ちゃんパパ 1』 #マンガ図書館Z https://t.co/3VT2WHJsq0
— 赤松 健 (@KenAkamatsu) 2020年5月12日
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単騎でマンガ図書館Zを陥落させた男 #連ちゃんパパ pic.twitter.com/wQHtWRbxqL
— 大槻ずん (@ohtsuki_zunko) 2020年5月12日
ざっくりとしたあらすじ
妻と小学生の息子と平和に暮らす高校教師である日乃本進、一見平穏かと思われた日常だったが、妻が突然家出をする。それと入れ替わるように、借金の取り立てを名乗るヤクザがやってきて、負債総額300万円の支払いを求められる。
日乃本はヤクザから逃げるように妻を探すために息子を連れて逃走する。妻はどうやら鎌倉のパチンコ屋に居たようだが……。
Kindleにあるあらすじはあんまり要点を掴んでない気がしたので改めて書きました。
まあここまではありそうな感じのマンガなんですよね。
ですが、このマンガ、『酒のほそ道』とかで有名なラズウェル細木みたいなほのぼのした絵柄しておいて、ものすごいえっぐい展開が矢継ぎ早に発生します。
転落のカタルシス
マトモだった人間がパチンコを軸に徐々に転落していく
このマンガ、かんたんに概要を説明すると、
失踪した妻を探して借金を返すために子供を連れて逃走する
↓
生きていくためのお金がないのでパチンコでその日暮らしする
↓
借金が増える
↓
借金を返してパチンコをするために徐々に悪事に手を染めていく
↓
一回チャラになるが主人公がアホすぎてまた債務が増える
↓
以下ループ
なんですが、登場人物すべてにマトモな人間が居ないんですよね。
登場人物にマトモな人間が居ない
先に、ネタバレにならない程度に主要な登場人物をご紹介しておきます
日乃本進
本作の主人公。高校教師。パチンコに有り金全部つぎ込んで借金を作って家出した妻の借金を肩代わりすることに。ヤクザから逃げて妻を探すために鎌倉に来たが、お金が無く、その日の飲食費や宿泊代を得るためにパチンコを始めるが、それをきっかけに転落への道を進んでいく。
置き引きした犯人を許すなどの謎のお人好しっぷりで、この性格が徐々に災いしていく。
善良な市民だったが、後にヤクザの債権回収を手伝うったときに債務者の娘の小学校に乗り込んで「この子の親御さんは借金して返してませーん!」と吹聴して回ったり、息子の担任を強姦したり、ある代の教え子が集まって更生のためにカンパしてくれたお金をパチンコで溶かすなど徐々に行動が狂っていく。
8話から一気にカルマ値がマイナスに行く。12話で突き抜けてくる。
日乃本雅子
進の妻。300万円の借金を作って逃走する。逃走先で男を作ってついでに子供も作る。
中盤以降にはなんか善人ポジションにいるが色々とやらかしてる。
フィリピン回のMVP。(ネタバレになるので言えない)
日乃本浩司
息子。小学生。多分一番の被害者。多分大人になったらnoteとかに幼少期の話を書いてる。
出る台についてやたら詳しい。お母さんの英才教育かな。
後半になるにつれ徐々にやさぐれていく。
ヤクザ
暴力金融(闇金)の社長。債権者。情に厚く、幼少期の自分が重なった浩司を助ける本作で一番の常識人。でも捨て犬を助ける不良理論なだけなので反社であることには変わりはない。進のゲス行為に時々ドン引きしている。
警察と医療が機能して無い世界
「登場人物が狂っている」「内容がエグい」とかはさんざん言われてるのでぜひそれは読んで確認していただきたく、それはさておき俺が「やべえな」と思ったのは、このマンガの世界は警察と医療が機能してないんですよね。
債務者を自殺未遂に追い込んでも叱責で終わる世界
8話で最悪の債権回収方法を編み出した進が、小学生の子を持つ親世帯の債務者にターゲットを絞って債権回収に手をつけたところ、その追い込みが激しすぎたせいで、債務者が自殺未遂を起こしてしまいます。債権者であるヤクザも「なんてことするんだ!今すぐ入院先に行ってこい!!」と激怒。
たいてい、ここまでの事態になったら司法の手が入って何らかの刑罰が下るはずですが……
警察官に病院で怒られるだけでお咎めなくその日で終了。
ええええーーーーーーーーー!?
警察と司法が仕事をしない世界線です。やばい。
ちなみにこの後進はさすがに堪えたのか浩司を連れて実家に帰り、地元の学校教師になりますが、地元で起こした横領事件とその借金を実家に押し付けてそのまま夜逃げして東京にとんぼ返りします。
ギャンブル依存に対して間違ったアプローチをしてくる医者
ちょっとどこのエピソードだったか忘れたのですが、誰かに「ギャンブル依存では?」と言われ、病院に行ったところ、病院で辞めるようにアプローチするのではなく、むしろやらせていく方向にアプローチしてるのがあった気がします。
あと、問診で「尊敬する歴史上の人物は?→水戸黄門*1」「好きな数字は?→7」でギャンブル依存と判定してたので色々とやばい。
とりあえず8話まで読んで欲しい
Twitter見てると同じことを言ってる方が多いですが、8話を面白いと感じたかでこの作品を読めるかの分水嶺だと思います。8話が面白かったらその後はするする読めます、どんどん読めます。物量的には単行本4冊ぐらいなので1日で読めると思います。
逆に8話で胸糞になった方はおすすめしないです。俺は笑いました。
個人的おすすめエピソードは8,12,16,23話。
ほんとは色々書きたいけど、ネタバレになるのも悪いので、とりあえず8話まで読んでください、面白かったらその後も読んでください。胸糞になったらやめといたほうがいいです。
ほんとは8話の内容すらネタバレしたくないが、これ以降これを上回るゲスが発生する
ほんとは「とりあえず8話まで読め」ってやりたいんですけど、それだと面白さが伝わらないんで若干ネタバレしました。
が、9話以降でこれを上回るゲスがどんどん矢継ぎ早に発生しますので、特に問題ないです。
焼肉屋さんでコースにしたら最初にいきなりカルビが来たと思ったら、その後サガリとかシャトーブリアンが山盛りでやってくるような感じですので、ぜひ安心と期待を持って読んでほしい次第です。
映画『ファイナル・デスティネーション』を彷彿とさせる展開と締め方
ところで皆様、ホラーサスペンス映画『ファイナル・デスティネーション』シリーズはご存知でしょうか。
「予知夢を見て自らの死を予知した主人公たちが、なんとかその運命に逆らおうとするものの、最終的には容赦無く全員死ぬ」 という展開で話が進むシリーズなんですけども。(ネタバレだけどネタバレにならないネタバレ)
この辺の予定調和を知ってる上で楽しむ、「誰も傷つかなくて誰も死ななくて安心」というサザエさんの真逆を行く「どうせ全員死ぬ」と割り切って安心して楽しめる映画だと僕は思ってるんですけど、『ファイナル・デスティネーション』シリーズを同じような感覚で見れる方は、『連ちゃんパパ』は楽しめるんじゃないかと思っています。
『確定した死』に向かう過程の美学
どうせ全員破滅する、破滅するのはわかってるからかえって安心して見れる
『既に死が確定していて、どう頑張っても絶対にハッピーエンドにはならない』ということがわかっている作品には、なんとも言えない美しさがあると思うんですよ。
『ファイナル・デスティネーション』シリーズ以外だと、最近遊んでる方を割と見かけるゲーム『Project Zomboid』とかじゃないでしょうか。
『ファイナル・デスティネーション』は「どうせ全員死ぬことはわかってるのでそれまでの過程を見る」映画であるならば、『連ちゃんパパ』は「どうせ全員破滅するのでそれまでの過程を見る」漫画だと思います。
最後まで読むとわかるんですが、まさに『ファイナル・デスティネーション』シリーズを彷彿とさせるような終わり方をするんですよね。
『ファイナル・デスティネーション』が死神と戦っていかに死ぬかの物語であるならば、『連ちゃんパパ』は貧乏神と戦っていかに破滅するかの物語です。そう、死や破滅は避けられないんですよ。何度か借金返済したりするけど。でも主人公が愚かだったり、運が悪かったり、誰かが余計な横やりを入れてきたりでそれ以上の損失を食らう。
「どうせ破滅する、どうせ死ぬとわかっているけど、その運命に抗おうとする、でも結局ダメになる物語」と捉えてみると、実はこの漫画は「主人公がクズなのを笑う漫画」という一言では捉えきれない、とても奥深い趣がある漫画だと……そう思いませんか?
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